シリコンキーパッド設計ガイド。荷重・ストローク、クリック率、接点、金型、照光、シール、図面、実装状態での検証まで、OEMが金型着手前に決める10項目を整理します。

このシリコンキーパッド設計ガイドは、OEMの設計・購買チームが金型着手前に確定すべき事項を整理したものです。指から回路までの構成、材料、キー形状、荷重-変位曲線、接点、表示文字、照光、筐体シール、組立基準、検証計画を一つの管理対象として扱います。シリコーンゴムキーパッドのDFMと試作承認に必要な入力を準備できます。ただし、荷重、ストローク、硬度、ウェブ、抵抗、寿命、IP等級、公差、価格、リードタイムに共通の正解を与えるものではなく、案件固有の試験や完成品承認を代替しません。
更新日: 2026-08-04
1. シリコンキーパッドとは何か、何ではないか
シリコンキーパッドは、指の押下を案内し、ウェブ(スカート部)またはドームに弾性エネルギーを蓄えて解放し、その動きを電気接点へ伝える成形エラストマー部品です。成形品にカーボン接点を一体化する方式、メタルドームや別体スイッチを押す方式、シール付きの機械式キーマットとして使う方式があります。Shin-Etsu Polymerの公開技術資料では、シリコーンドームの形状と材料がF/S曲線を作り、下側の接点が回路を閉じる構成として説明されています。
キーパッド単体は、完成したスイッチアセンブリではありません。タッチスクリーンでも完成筐体でもなく、IP等級の証明にもなりません。電気的な導通は、回路、接点パターン、閉成荷重、支持構造、筐体、ファームウェア閾値の影響を受けます。環境性能は、組み立てた筐体と各インターフェースを実際に試験して判断します。
指から回路までの基本スタック
指 → キートップと表示文字 → ガイドまたはベゼル → 成形ウェブ → プランジャ/接点保持部 → 導電接点または別体スイッチ → PCB、FPCまたはPET回路 → 剛性支持部 → 筐体、締結部、シール経路
矢印の一つひとつが設計インターフェースであり、それぞれに責任者が必要です。
| 構成要素 | 管理する機能 | 案件で必要な入力 | 未定義のまま進めた場合の不具合 |
|---|---|---|---|
| キートップと表示文字 | 指の位置決めと機能表示 | 天面形状、寸法、版下、色、表面、視認条件 | 誤操作、判読性低下、印刷可能範囲からのはみ出し |
| ガイド/ベゼル | 横方向の動きを制限し端部を保護 | クリアランス、基準、横荷重、外観隙間 | 擦れ、がたつき、復帰不良 |
| 成形ウェブ | ばね特性を発生 | 断面、R、材料系、押下/復帰目標 | ピーク荷重ずれ、復帰力不足、裂け、キー間ばらつき |
| プランジャ/保持部 | 回路方向へ動きを伝達 | 中心、全高、ストッパ関係、角度公差 | 偏心荷重、回路への過大荷重 |
| 接点 | 電気信号を成立 | 種類、寸法、保持、位置、閉成荷重、治具 | 断続導通、抵抗不安定、汚染感度上昇 |
| PCB/FPC/PET回路 | 接点を受ける | パッド形状、表面処理、間隔、支持、電気閾値 | 接点不整合、たわみ、短絡、誤判定 |
| 支持構造 | たわみと底付きの管理 | 材料、厚さ、平面度、締結、局所支持 | 単体では良いキーが実装後に悪化 |
| 筐体とシール経路 | 圧縮、通気、位置、浸入境界の設定 | 基準、締結荷重、ガスケット経路、試験構成 | 予圧変動、空気溜まり、漏れ、操作感変化 |
CAD開始前に、供給範囲を「成形キーマット単体」「キーマット+回路」「試験済みモジュール」「完成筐体」のどこまでとするか決めます。剛性板上で合格した荷重曲線は、たわむPCB上で同じ結果になるとは限りません。IEC 60529は電気機器の外郭が提供する保護を分類する規格です。周囲ビードやキーパッド単体だけでIP65、IP67、IP68を名乗ることはできません。
設計原則: シリコーン部品の外形だけでなく、実装された全スタックを管理する。
2. シリコンキーの荷重が電気信号になるまで
シリコンキーは、一つの荷重値だけで動作するものではありません。ウェブが押下に抵抗し、ピーク荷重に達し、接点位置へ向かって荷重が低下し、回路が閉じ、安定導通に必要な距離だけ進みます。指を離すと、押下時とは異なる経路で復帰します。仕様書には押下曲線と復帰曲線の両方が必要です。
動作は次の順で進みます。
- 指がキートップを押し、ガイド、ベゼル、筐体が横方向の動きを制限する。
- 成形ウェブが変形して弾性エネルギーを蓄える。断面、R、キー高さ、配合、硬化状態、横荷重が曲線に影響する。
- プランジャまたは成形保持部が接点を回路へ近づける。
- 規定の閉成荷重で接点がPCB、FPCまたはPETのパターンを橋絡し、電気状態が変わる。
- メカニカルストッパ、回路支持、オーバートラベル量がそれ以上の移動を制限する。復帰時は接点が確実に離れ、キーが引っ掛からず初期位置へ戻る。
Shin-Etsu Polymerの技術資料では、代表的なF/S曲線をF1、F2、S1、S2で表し、クリック率を (F1 − F2) / F1 × 100% と定義しています。この式はイベント名を明確にするもので、共通の目標値を定めるものではありません。
| 曲線イベント | 図面での定義 | 重要な理由 | よくある誤り |
|---|---|---|---|
| 初期位置と予圧 | 実装時ゼロ点、筐体圧縮、プローブ接触、回路支持状態 | 予圧で押下・復帰曲線全体が移動する | 単品でゼロ調整し、実装状態を同じ基準で合否判定する |
| F1: ピーク荷重 | 押下曲線の主な荷重低下前の最大荷重 | 初期操作力とウェブ反転を表す | イベントを定義せず「作動力」だけ記載する |
| S1: ピーク位置 | F1時点の移動量 | 荷重ピークと形状を結び付ける | 別の測定曲線からF1とストロークを拾う |
| F2: 接点荷重 | 機械または電気接点成立時の荷重 | 回路が閉じた時の保持荷重を示す | 接点荷重と接触抵抗を混同する |
| S2: 接点位置 | 接点成立時の移動量 | スタック高さと回路位置を決める | 異なるPCBパターンで接点位置を測る |
| 安定導通域 | 初回導通後に許容する移動量と荷重 | 底付き前の導通余裕を確保する | 最初の導通だけで承認する |
| メカニカルストッパ | 荷重を制限する筐体、キーまたは支持形状 | 回路保護と底付き感を安定させる | PCBを偶発的なストッパにする |
| 復帰 | 開離点、最低復帰挙動、残留予圧、ヒステリシス | 接点開離とキー復帰を確認する | 押下曲線だけ承認する |
F1、F2、S1、S2以外の記号は、メーカー資料間で統一されていません。たとえばF3が終端荷重を指す場合も、復帰側の荷重を指す場合もあります。記号だけに依存せず、各イベントを文章で定義します。
クリック率、キー比、ウェブ比は同じ意味ではない
key ratioが触感のクリック率を指すなら、F1/F2の式とイベントを併記します。幾何比を指すなら、二つの寸法、断面、基準、測定方向を明示します。web ratioという語だけでは金型形状を管理できません。
確認したASTM、IEC、ISO、WACKER、Shin-Etsuの資料には、シリコンキーパッドに共通するウェブ比の式はありません。ウェブ形状は、厚さ、角度、R、テーパ、内外の固定部、局所的な断面変化の組合せです。一つの未定義比率にまとめると、金型で加工すべき形状が見えなくなります。
初期サンプル用の技術参考値
キーパッドの操作感に共通の標準値はありません。次の値は、N&H Technologyの設計ガイドから一組として採用した初期検討用の基準と、MekoPrintのウェブ厚に関する検討点です。JASPERの実測値、合格基準、製品承認データではありません。量産リリース値は、承認済み材料、形状、実装状態、試験方法で確定します。
| 項目 | 初期参考値 | 出典条件 | 案件のリリース入力 |
|---|---|---|---|
| 材料硬度 | 55 ± 5 Shore A | N&Hの代表的キーパッド基準 | 材料グレード、硬度尺度、方法、測定位置、公差 |
| ピーク荷重F1 | 180 ± 50 cN(1.8 ± 0.5 N) | N&Hの代表的キーパッド基準 | キー群、実装試験状態、目標曲線、公差 |
| クリック率 | 50 ± 10% | N&Hが定義する荷重イベント | F1/F2定義、復帰条件、案件公差 |
| キーストローク | 1.1 ± 0.1 mm | N&Hの代表的キーパッド基準 | S1/S2、終端位置、各公差 |
| ウェブ厚の初期検討点 | 約0.5 mm | MekoPrintの経験則。硬度・配置依存 | 成形メーカーが確認した断面とサンプルF/S曲線 |
元資料のcNとmmは管理記録に残し、単位換算で元の許容幅を変えないでください。
Shore硬度はキー操作感ではない
ASTM D2240は、規定したデュロメータを用いるゴム・エラストマーの押込み硬さ試験です。圧子形状、荷重、弾性率、粘弾性の影響を受ける経験的な管理試験であり、実装キーのF/S曲線を測るものではありません。
同じShore A値の配合でも、ウェブ、キー高さ、接点位置、予圧、支持、硬化状態、筐体クリアランスが違えば操作感は変わります。図面では硬度尺度と試験方法を指定し、実装状態のF/S特性を別に規定します。
圧縮永久ひずみも別の特性です。ASTM D395-18(2025)は、規定した静的圧縮後の回復を定荷重法または定変位法で扱います。常時圧縮されるシールやキーパッドには関係しますが、ウェブの繰返し変形、復帰、打鍵耐久を代替しません。
ラバーコンタクトの接点も同様です。成形カーボン接点、導電印刷、めっき接点などでは、PCBパッド形状、表面処理、閉成荷重、測定方法が異なります。Shin-Etsuの公開表も特定のPCBパターンと治具条件に結び付いており、抵抗値だけを切り離して比較できないことを示しています。
測定原則: 荷重や比率の単独値ではなく、押下イベント、復帰イベント、電気イベント、試験状態、治具を一組で承認する。

3. シリコンキーパッド設計ガイド:金型前に決める10項目
有効な設計ルールは、他社図面の寸法をコピーすることではなく、意思決定の境界を明確にすることです。製品範囲、材料、F/S特性、キー役割、ウェブ形状、接点、加飾、照光、筐体統合、量産承認の10項目を金型メーカー任せにしてはいけません。
| # | 設計判断 | 管理する成果物 | 良い状態 | 中止条件 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 製品・供給範囲 | キーマット単体、回路付き、試験済みモジュール、完成筐体 | 指から回路まで各インターフェースに責任者がいる | RFQと図面で供給範囲が異なる |
| 2 | 材料システム | 材料系、グレード/承認手順、硬度方法、色、硬化・ポストキュア | グレードに結び付くデータと変更管理がある | 「シリコン、硬度50」だけで尺度・方法・グレード方針がない |
| 3 | F/S特性 | 押下・復帰曲線、F1/F2/S1/S2、復帰、オーバートラベル、ストッパ、試験状態 | 実装スタックでイベントと公差が定義される | 異なる役割のキーに一つの荷重値をコピーする |
| 4 | キー役割と形状 | キートップ、ガイド、ウェブ断面、R、高さ、間隔、中心、横荷重 | 機能寸法が共通基準に結び付く | 外観CADだけでウェブ断面や接点中心がない |
| 5 | 接点と回路 | 接点種類・保持、PCBパターン・表面、閉成荷重、支持、閾値 | 接点と回路を組み合わせた治具がある | PCBと荷重を示さずカーボン接点の抵抗だけを書く |
| 6 | 表示文字と表面 | 版下、印刷範囲、色基準、テクスチャ、コーティング、摩耗・洗浄方法 | 外観マスターと客観的な損傷限界がある | 暴露条件や判定基準なしに「消えない印刷」とする |
| 7 | バックライト | LED、位置、電流、透過層、遮光、輝度・均一性、周囲光 | 実筐体で通電したサンプルを承認する | 非通電または筐体外で文字だけ承認する |
| 8 | 筐体とシール | シール経路、圧縮、通気、締結、筐体基準、浸入試験構成 | 完成筐体の断面図と試験計画がある | 成形部品単体にIP等級を付与する |
| 9 | 成形と金型 | HCR/LSR、パーティング、ゲート、ベント、バリ、収縮、キャビティID、修正計画 | 鋼材加工前に工程が決まる | 材料やシール面未定義のまま金型着手する |
| 10 | 組立と検証 | 支持、予圧、コネクタ、ファームウェア閾値、サンプル計画、変更管理 | 承認データが改訂とキャビティに結び付く | 外観サンプルを量産承認とみなす |
3.1 操作感を調整する前にキーの役割を分ける
電源キー、非常操作、連続して使うナビゲーションキー、数字入力、隠しサービスキーでは、誤作動と反復操作のリスクが異なります。機能、操作者、手袋、姿勢、使用頻度でキーを分類し、分類ごとに曲線群を定義します。
幅、高さ、表示、ガイド、接点位置が異なるキーへ同じ公称荷重を一括適用すると、ピーク荷重が合っても復帰、がたつき、導通タイミング、底付き感が揃いません。中央の測りやすいキーだけでなく、隅、長尺、小型、高頻度キーを代表サンプルに含めます。
3.2 ウェブ形状がばね特性を作る
ウェブは成形ばねですが、特性は厚さだけでは決まりません。内外の固定部、断面変化、角度、R、局所テーパ、キー高さ、キートップのモーメントアーム、ガイド隙間、配合、硬化状態が連動します。横荷重も曲線を変えます。
- 指荷重が過大な曲げモーメントを作らず、想定した天面へ入ること。
- 全押下・復帰範囲で、ガイドが有害な横移動を防ぎながら擦れないこと。
- ウェブ断面が急な角や未検討の段差ではなく、成形可能な滑らかな遷移を持つこと。
- 最悪の位置ずれでも、プランジャまたは接点中心が回路基準へ着地すること。
- PCB、コーティング、接点が偶発的なストッパになる前に、意図したストッパで荷重を制限すること。
- 外周シールを外部へ開通させず、押下時の空気を逃がせること。
メーカーの初期値が一致しないのは、材料、金型、形状、試験方法が違うためです。この差は、普遍的な寸法がないことの証拠でもあります。成形メーカーは断面付きDFM案と予測または試作F/S曲線を返し、OEMは実装結果を承認します。
3.3 接点とPCBを一つのインターフェースとして扱う
カーボン接点(カーボンピル)は一般的ですが、唯一の方式ではありません。Shin-Etsu Polymerは、カーボンシリコーン印刷、成形カーボン接点、低抵抗カーボン、めっき接点、メタルドームを別方式として示しています。抵抗、厚さ、保持、荷重経路、コスト、試験方法は方式ごとに変わります。
リリース資料では、接点と相手回路を同時に定義します。接点寸法・位置・保持方法、PCBパッドパターン、導体表面、パッド間隔、回路支持、電気閾値、閉成荷重、コンディショニング、測定治具が最低限必要です。金めっきの基準クーポンで合格した接点が、量産PCBでも合格するとは限りません。
初回導通だけでなく、許容オーバートラベル内の安定導通、復帰時の開離、偏心押下、筐体予圧の影響を確認します。ファームウェアのデバウンスや閾値が判定に関係する場合は、ハードウェア証拠と同じ改訂管理に含めます。
3.4 表示、コーティング、照光を積層として設計する
印刷文字、成形色、塗装、レーザー開口、硬質キートップは別の課題を解きます。視距離、周囲光、手袋、洗浄剤、摩耗形態、触覚目印、色差、使用環境から方式を選びます。
Shin-Etsu PolymerのHG構成例では、成形シリコーン、透過する表示色層、暗色遮光層、レーザーによる記号開口、保護トップコートを重ねます。これは一つの公開構成例であり、寿命値やJASPERの工程を証明するものではありません。
照光均一性はLEDだけでは決まりません。MekoPrintの2025年ガイドは、シリコーン厚、顔料、LED位置、遮光、筐体形状を連成する光学入力として扱っています。バックライト付きシリコーンゴムキーパッドは、規定電流、周囲光、視野角、実筐体で通電承認します。
レーザー加工シリコンキーパッドの版下は、印刷・レーザー可能範囲が確定してから凍結します。エッジ品質、光漏れ、色、光沢、位置、摩耗を規定します。IEC 60068-2-70は指や手による表示摩耗の試験方法に使えますが、厳しさ、液体、前処理、不合格条件は案件側で選びます。
3.5 シール性能は筐体で成立する
成形キーパッドはシールの一部になれますが、試験境界には筐体面、締結、圧縮、接着剤またはガスケット、ケーブル出口、回路開口、ベント、組立ばらつきが含まれます。シール経路を断面で示し、共通基準へ結び付けます。締結荷重と圧縮は、キーウェブへ不要な予圧を加えないよう管理します。
空気溜まりは別の設計課題です。内部ベント溝でキー空間を連結しながら外周シールを維持できる場合があります。外部へ開く穴は圧力を逃がす一方、浸入境界を壊す可能性があります。完全な筐体と試験構成を基に判断します。
リリース原則: 各判断に、管理成果物、証拠の責任者、金型着手を止める条件を設定する。
4. 材料、成形法、金型方針を同時に決める
材料選定は単独の購買判断ではありません。WACKERの材料・加工ガイドは、固形の高粘度シリコーンゴムと二液型液状シリコーンゴムを区別し、圧縮、トランスファー、射出という成形経路を説明しています。必要な硬化後物性、材料系、形状、数量、設備、ノウハウによって工程を選ぶという境界が重要です。
HCRとLSRのどちらかが常に優れるわけではありません。必要なウェブ、接点、色、表面、インサート、キャビティ数、検査証拠を、修正計画込みで再現できる工程を選びます。
| 材料・工程 | 一次資料に基づく特徴 | 設計への影響 | リリース前の質問 |
|---|---|---|---|
| HCR+圧縮成形 | 固形配合を所定量にして金型へ置くプレス成形 | 材料配置、流動、バリ、色分け、インサート、キャビティバランスを確認 | グレードと硬化系は何か。投入量をどう管理し、バリをどこまで許容するか |
| HCR+トランスファー/射出 | 固形シリコーンにも別の流動経路がある | ランナー、ゲート、流動、ベント、インサート方針が圧縮成形と異なる | 選定理由と自動化・形状上の利点は何か |
| LSR+射出成形 | 低粘度の二液付加硬化系 | ゲート、ベント、微小隙間のバリ、材料取扱い、離型を材料に合わせる | 材料データ、混合管理、ゲート/ベント、バリ限界、離型計画は何か |
| 二次仕上げ | 必要に応じポストキュア、バリ除去、接着、塗装、印刷、レーザーを実施 | 成形直後の寸法・色と最終状態が変わり得る | 工程順、最終検査状態、各工程の責任範囲は何か |
WACKERは広いシリコーン材料群について、およそ2~4%の線収縮を示す一方、実際の収縮は材料グレードと工程条件に強く依存すると説明しています。この範囲をキーパッド金型の収縮率として直接使ってはいけません。選定配合のデータ、金型温度、形状、成形メーカーのトライ結果で金型補正値を決めます。
ポストキュアも同様です。圧縮永久ひずみなどの物性を変え、揮発成分を減らす場合がありますが、要否と条件はグレード、肉厚、用途によります。ハンドブックの温度・時間例を部品仕様へそのまま貼り付けず、最終状態と証拠を指定します。
金型リリースは面ごとにレビューする
- キーウェブ、シール、ガイド、加飾範囲、回路基準を形成する面はどれか。
- パーティングライン、ゲート、ベント、オーバーフロー、取出し形状、痕跡はどこか。
- バリ領域は機能面、外観面、シール面、隠れ面のどれか。
- R、アンダーカット、抜き勾配、シャットオフをどの金型面で作るか。
- 接点インサートをどう保持し、中心へ配置するか。
- 寸法は金型依存、締結依存、仕上げ依存、コンディショニング後測定のどれか。
- キャビティをどう識別し、採取し、修正後に比較するか。
低粘度LSRは微小隙間へ入りやすいため、パーティング、ゲート、ベント、オーバーフロー、バリに敏感な面を意図的に検討します。ProtolabsのLSR設計資料も、可能な範囲でパーティングラインをシール面から外すよう案内しています。これは金型インターフェースの検討事項であり、JASPERの能力や全工程共通公差を示すものではありません。
ISO 3302-1:2014は成形ソリッドゴム製品の寸法公差クラスと適合の考え方を定めます。合意したクラスを図面で引用しても、荷重に効くウェブ、接点位置、組立基準には個別管理が必要です。一般公差への適合だけでF/S曲線は保証されません。
JASPERの採用グレード、HCR/LSR範囲、成形法、ポストキュア、金型調達、キャビティ修正、内製・外注区分は案件ごとの書面確認が必要です。
金型原則: 配合、工程、最終状態、金型インターフェース、収縮補正、修正責任を一緒に凍結する。
5. シリコンキーパッド図面パッケージの作り方
3D形状だけでは、シリコンキーパッド図面パッケージとして不十分です。3Dモデルは面を定義し、2D図面は管理要求、基準、測定状態、合格条件を定義します。回路、版下、光学、環境、組立資料で残りのインターフェースを閉じます。
| 資料 | 最低限必要な管理内容 | 承認責任 |
|---|---|---|
| 3D CAD | 完成状態の公称形状、キートップ、ウェブ、ガイド、プランジャ、シール、ベント、アンダーカット、組立周辺 | 機械設計 |
| 2D部品図 | 改訂、単位、基準、機能寸法、公差体系、硬度方法、色、表面範囲、注記 | 機械・品質 |
| F/S仕様 | 試験状態、プローブ、方向、速度、予圧、支持、F1/F2/S1/S2、復帰、オーバートラベル、ストッパ、公差 | 人間工学・機械 |
| 回路資料 | PCB/FPC/PET改訂、パッド、表面、厚さ、支持、コネクタ、閾値、ファームウェア依存 | 電気設計 |
| 接点定義 | 種類、材料/製品参照、寸法、位置、保持、閉成荷重、抵抗方法、治具 | 電気・サプライヤ品質 |
| 版下マスター | ベクターデータ、フォント、正負表示、色基準、位置基準、保護範囲 | 工業デザイン・ブランド |
| 光学仕様 | LED品番、位置、駆動、透過/遮光層、輝度・均一性領域、周囲光、視野 | 光学・電気 |
| 筐体断面 | ベゼル隙間、シール、圧縮、締結、支持、通気、ケーブル出口、浸入試験構成 | 機械設計 |
| 検証マトリクス | 段階、キャビティ/位置別数量、前処理、方法、限界、故障定義、報告形式 | 品質・設計保証 |
| 供給範囲記録 | キーマット/モジュール、回路、LED、コネクタ、筐体、梱包、変更管理、トレーサビリティ | 購買・生産・品質 |
機能寸法は、実際に成立させる関係で記入します。ゴム外周からのキー中心が公差内でも、筐体がゴムとPCBを別基準で位置決めすれば接点が外れます。キー中心と回路中心、シールビードと筐体ランド、ガイドとベゼル、プランジャとストッパ、接点と支持パッドの関係を図示します。
ISO 23529:2016は、ゴム試験片の作製、保管、コンディショニング、成形から試験までの時間を扱います。完成キーパッドの試験規格ではありませんが、曲線やロットを比較する際に、試料年齢、前処理、環境を記録する根拠になります。
6段階の承認ゲート
試作とサンプル承認は、一枚の外観サンプルではなく、判断を段階に分けて進めます。
| ゲート | 必要な証拠 | リリース判断 |
|---|---|---|
| 1. 要求凍結 | 操作者、環境、キー役割、構成、供給範囲、回路、リスク | 成形シリコーンが適切か。範囲は閉じているか |
| 2. DFM/スタックレビュー | 断面付き3D、注記付き2D、材料・工程案、金型面注記、F/S計画 | 重要インターフェースが成形可能で責任分担されているか |
| 3. 金型設計レビュー | パーティング、ゲート、ベント、バリ、キャビティID、収縮、インサート、修正余地 | シール、ウェブ、接点、外観を推測せず鋼材加工できるか |
| 4. 機械サンプル | 寸法、嵌合、予圧、がたつき、押下・復帰曲線、ストッパ、接点位置 | 実装した機械スタックが意図を満たすか |
| 5. 加飾・通電アセンブリ | 量産相当接点/回路、表示、塗装、LED、筐体、ファームウェア、外観マスター | 電気、光学、表面、組立が同時に合格するか |
| 6. 量産リリース | キャビティ/位置データ、検証、承認データ、検査、梱包、変更記録 | 量産状態を再現・追跡できるか |
「サンプル承認」の一言にまとめないでください。色見本はウェブ寿命を承認せず、単品の荷重試験は筐体予圧を承認せず、導通サンプルは文字摩耗やシールを承認しません。サンプルごとに判断目的と改訂を記録します。
シリコンキーパッドアセンブリでは、成形品単体より供給インターフェースが増えます。PCB支持、LED、コネクタ、筐体嵌合、プログラム、最終機能試験、梱包をどちらが担当するか明記します。公開製品ページが示すのは選択可能な供給形態であり、個別案件の範囲は書面確認が必要です。
図面原則: レビュー担当者が、金型メーカーに設計判断を委ねず、形状、荷重、回路、光学、筐体、試験状態、供給範囲を再構成できること。
6. キーマット単体ではなく実装システムを検証する
検証は、利用者が実際に押す状態を再現します。通常は量産相当の筐体、回路支持、接点パターン、締結、予圧、LED、コネクタ、ファームウェアを含みます。単品試験は工程管理に使えますが、合否の境界を明示します。
キーパッドに共通の一律試験パッケージはありません。試験・検証計画では、要求、サンプル、量産証拠、変更を別ゲートとして扱います。
| 特性 | 試験状態・方法の入力 | 合格証拠 | 規格の境界 |
|---|---|---|---|
| 寸法・位置 | 前処理済み完成品、基準、測定器、キャビティ、位置 | 部品改訂・キャビティに紐付く報告 | ISO 3302-1を使っても重要寸法は個別管理 |
| 材料硬度 | 試験片または部品位置、デュロメータ、前処理、測定時間、版 | 配合/ロットと尺度に紐付く結果 | ASTM D2240はキー操作感の承認ではない |
| 押下・復帰F/S | 実装支持・筐体、プローブ、方向、速度、予圧、前押し回数、N、mm | 全曲線とF1/F2/S1/S2、復帰、ストッパ | 共通曲線を定める引用規格はない |
| 電気導通 | 量産接点、PCBパターン・表面、支持、閉成荷重、閾値、取得系 | 導通、安定域、開離、反復記録 | 治具が違う抵抗表は直接比較できない |
| 表示・塗装 | 量産仕上げ、摩耗媒体、洗浄剤、前処理、損傷限界 | 前後画像と客観的判定 | IEC 60068-2-70の厳しさは案件選定 |
| バックライト | 量産LED、電流、遮光、塗装、筐体、周囲光、視野角 | 輝度・均一性マップと外観マスター | 共通のLED間隔や輝度値はない |
| 筐体浸入 | 完成筐体、ケーブル、締結、姿勢、前処理、試験後機能 | 正確な改訂に対する範囲付き報告 | IEC 60529はキーパッド単体ではなく外郭に適用 |
| 環境暴露 | 温度、湿度、液体、時間、遷移、通電状態 | 規定時点の機能・材料確認 | 条件は製品環境と適用要求から決める |
| ESDイミュニティ | 完成・通電機器、印加点、接地、動作モード、性能基準 | 機器レベル報告と回復動作 | IEC 61000-4-2:2025は裸シリコーンの材料主張ではない |
| 打鍵耐久 | 実装荷重経路、移動量、周波数、環境、回路、サンプル、故障定義 | 規定間隔の曲線、電気、外観、亀裂記録 | 条件のない回数は他案件へ移せない |
故障は症状ではなく証拠から診断する
不具合が出たら、ウェブや材料をすぐ変更せず、曲線、組立状態、サンプルID、キャビティ、回路、環境履歴を保存します。
| 症状 | 想定するインターフェース連鎖 | 最初に確認する証拠 | 管理された次の処置 |
|---|---|---|---|
| 実装後だけF1が高い | 筐体圧縮 → ウェブ予圧 → F1/S1移動 | 単品/実装曲線、締結高さ、締結順 | 硬度変更前にスタック・予圧を修正 |
| 復帰が遅い | ガイド擦れ、横荷重、空気溜まり、復帰余裕不足、汚染 | 復帰曲線、横荷重動画、ベント、擦れ跡 | ガイド、通気、復帰要因を一つずつ分離 |
| 導通が不安定 | 接点位置 → PCB形状・表面 → 支持たわみ → 荷重 → 汚染 | 接点マップ、量産PCB、支持変位、同期F/S・電気曲線 | 接点と回路の組合せを修正 |
| 特定キー/キャビティだけ変動 | 局所断面、ベント、バリ、インサート、硬化、測定位置 | キャビティ/位置データ、断面、工程記録 | 同じ位置を比較して原因箇所を修正 |
| 表示・塗装が早期摩耗 | 前処理 → インク/塗装 → 硬化 → 洗浄・摩耗 | バッチ、断面、密着、摩耗記録 | 実暴露条件で仕上げ積層を再認定 |
| 照光ムラ/光漏れ | LED → 顔料・厚さ → 遮光 → 塗装 → 筐体反射 | 通電光学マップ、層サンプル、筐体 | 光学スタックを調整し、通電状態で再承認 |
| 筐体から浸入 | シールランド → 圧縮 → パーティング・バリ → 締結・ケーブル → 通気 | 漏れ位置、圧縮断面、組立記録 | シール経路全体を修正し同一構成で再試験 |
ゴールデンサンプルは外観比較に使えますが、数値、図面、承認曲線を置き換えません。改訂、材料ロット、キャビティ、前処理、測定記録を一緒に保管します。配合、金型、接点、PCB表面、塗装、LED、筐体、試験法のいずれかが変われば、影響する証拠を再開します。
検証原則: 量産相当の実装スタックを検証し、故障証拠を保存し、各合格を改訂・方法・条件・サンプルIDに結び付ける。
7. シリコンキーパッドが適する用途、適さない用途
成形キー形状、調整可能な荷重経路、触知性、色や照光、筐体シールへの組込みが必要な製品では、シリコンキーパッドが候補になります。用途名だけでは構成を決められません。
| 用途 | 候補になる条件 | 判断を左右する入力 | 維持すべき境界 |
|---|---|---|---|
| 産業制御 | 手袋や視認制限下でも位置を触知できるキーが必要 | 手袋、寸法・間隔、横荷重、汚染、洗浄、視認、照光 | パネル、支持、表示、筐体全体を検証 |
| 医療・分析装置 | 成形UIがヒューマンファクターと洗浄手順に合う | 接触条件、洗浄剤、環境、リスク管理、機器要求 | 材料データだけで完成機器の検証・規制承認を主張しない |
| 車載操作部 | 限られた取付位置で操作感、実装、照光、外観を成立させる | 温度、振動、日射、薬品、手袋、照光、OEM試験 | 適用OEM/アセンブリ要求を使い、一般値を転用しない |
| 船舶・屋外機器 | 突出キーと一体シールが筐体に適する | 塩水、水、UV、温度サイクル、ケーブル、通気、締結、剛性 | 完成筐体を試験し、キー単体へIPコードを付けない |
| 携帯機器 | 一部品で複数キー、触覚目印、色、接点保持をまとめたい | 落下、ポケット内誤作動、基板支持、薄型、摩耗 | 全厚、金型変更、保守性を代替方式と比較 |
次の場合は、成形シリコーンが最適とは限りません。
- キー高さがほぼ不要で、薄く平坦な印刷UIならメンブレンキーパッドが適する場合がある。
- 表示や操作が頻繁に変わるなら、静電容量タッチと別設計の触覚フィードバックが適する場合がある。
- 特性が確立した標準ディスクリートスイッチで足りる機能は、専用成形ウェブの利点が小さい。
- 連続回転、比例アナログ入力、ガード付き非常操作は別の操作機構が必要になる。
- 少量で形状が未確定の段階では、構成と需要が固まるまで量産金型を待つ方がよい。
比較対象は操作感だけでなく、全厚、シール、表示、照光、回路、組立、試験負担、金型変更、保守です。メンブレンキーパッドとシリコンキーパッドの比較は、構成選定の追加資料として使えます。
構成原則: 操作者、全スタック、環境、検証負担、代替方式を比較してから成形シリコーンを選ぶ。
9. キーパッド図面または3Dモデルを送る
次の実務的な一手は、管理された設計レビューです。キーパッド図面または3Dモデルを送付する際は、相手回路、筐体断面、キー役割、初期F/S目標、接点方式、版下、照光スタック、環境、検証マトリクス、供給範囲を添付します。
未確定事項は未確定と明記してください。メーカーは配合、ウェブ、金型、接点、塗装を提案できますが、仮定と根拠を記した改訂管理済みDFMとして返す必要があります。設計判断を金型鋼材の中へ埋め込んではいけません。
JASPERもこのレビューを行う実装候補の一社です。実際に提供される材料、成形法、金型範囲、二次工程、試験方法、組立範囲、証拠、MOQ、リードタイムは、案件ごとに書面で確認してください。
発注または金型リリース前に、すべての初期値を管理図面と承認記録で確定します。
よくある質問
OEMはシリコンキーパッドにどのShore硬度を指定すべきですか?
特定のShore A値だけで必要なキー操作感は保証できません。本ガイドの55 ± 5 Shore Aは、1社の設計資料から採用した初期参考値です。量産リリース前に、承認済み配合、ASTM D2240などの試験方法、試験片または測定位置、公差、実装状態のF/S目標へ置き換えてください。
シリコンキーパッドの正しいウェブ比はいくつですか?
すべてのキーパッドに共通するウェブ比を定めた確認済み規格はありません。クリック率を指すなら (F1 − F2) / F1 × 100% と荷重イベントを示します。幾何比なら分子、分母、断面、基準、測定方向、完成状態を定義します。比率だけで金型を管理してはいけません。
荷重とストロークはどのように指定しますか?
規定した試験状態で、押下と復帰の全曲線を指定します。プローブ、方向、速度、予圧、支持、コンディショニング、F1、F2、S1、S2、安定導通域、復帰イベント、オーバートラベル、ストッパを定義します。荷重はN、移動量はmmで記録し、承認済み資料の元単位も残します。
最終PCBなしでカーボン接点を承認できますか?
基準クーポンは接点の選別に使えますが、量産インターフェースの承認にはなりません。最終承認には、量産接点、PCBパッド形状と表面処理、回路支持、閉成荷重、電気閾値、コンディショニング、測定方法が必要です。治具条件の異なる接触抵抗値を同等に比較してはいけません。
シリコンキーパッド図面パッケージには何が必要ですか?
改訂管理した3Dモデル、2D図面、F/S仕様、量産相当回路、接点定義、ベクター版下、光学要求、筐体断面、検証マトリクス、供給範囲記録を含めます。機能基準、重要状態、試験条件、承認責任者、変更管理も明記してください。
成形シリコンキーパッド単体にIP等級を付けられますか?
キーパッド単体では完成筐体のIP等級を立証できません。IEC 60529は、試験した電気機器の外郭が提供する保護を分類します。報告書には、筐体、キーパッド、シール、締結、ケーブル状態、姿勢、前処理、試験後機能、正確なアセンブリ改訂を記載します。
バックライトやレーザー加工した表示文字はどう承認しますか?
シリコーン、顔料、透過層、遮光層、レーザー開口または印刷、保護塗装、LED、駆動電流、筐体、周囲光、視野角を含む量産相当の通電スタックで承認します。均一性、ホットスポット、光漏れ、色、位置、摩耗、洗浄剤、目視損傷の基準を定義してください。
シリコンキーパッドの金型をリリースできるのはいつですか?
材料・工程、ウェブ断面、接点とPCB、F/S測定法、ストッパ、シール経路、ベント、パーティングライン、ゲート、バリ範囲、版下、光学スタック、組立基準、サンプル段階、修正責任、合格マトリクスが同じ改訂で管理された時点でリリースします。
図面と要求仕様の技術レビュー
図面、使用環境、年間数量をお送りください。製造前に構造と検証条件を確認します。