カバーレンズ、電極寸法・ピッチ、GND、水滴誤検出、コントローラ状態、復帰、実機検証を整理するPCAP設計ガイド。

静電容量式タッチパネルの水・手袋対応は、感度設定を一つ変えれば成立する機能ではありません。使用する手袋、カバーレンズ、電極、液体の状態、GND、コントローラの動作モード、拒否すべき入力、復帰条件まで定義し、最終筐体に組み込んだ状態で検証する必要があります。
最終更新: 2026年8月4日
PCAPタッチパネルは、センサ単体ではなく一つの入力システムとして評価します。カバーレンズ、印刷、接着層、空隙、電極、ディスプレイ、筐体、コントローラ、ファームウェア、ベゼル、ガスケット、排水経路のどれが変わっても、検出結果は変わり得ます。JASPERは物理スタックを相談できる製造候補の一社ですが、センシング設計、設定、装置側の制御、最終検証の担当範囲は案件仕様で明記しなければなりません。
1. 調整前に、水濡れ時と手袋着用時の要求動作を決める
有効な要求仕様には、「受け付ける操作」「拒否するイベント」「通常状態へ戻す条件」の三つが必要です。「手袋対応」だけでは、手袋の型式、材質、重ね枚数、フィット、指先構造、乾湿状態、操作姿勢が分かりません。「防水タッチ」も同様です。筐体への水の侵入を防ぐこと、水滴があっても誤検出しないこと、濡れた指を追従すること、洗浄中は入力を止めることは、それぞれ別の要求です。
濡れた指の検出では、液体によって電界結合が変わるなかで意図した接触を認識します。一方、水滴誤検出の抑制では、操作していないときの液体を無効入力として分類します。清掃モードで入力を止める設計もあります。IEC 60529が扱うのは、所定の試験条件における筐体の保護等級です。表面が濡れた状態でタッチ操作できることを規定する規格ではありません。
最初に作るべき成果物は調整ファイルではなく、次の動作表です。
| 表面・入力の状態 | 決めるべき動作 | 防ぐべきイベント | 残す証拠 |
|---|---|---|---|
| 乾燥面・素手 | 承認したキーやジェスチャーを受け付ける | 未検出、隣接キー、端部の座標ずれ | 座標/イベント、応答、リリース記録 |
| 乾燥面・指定手袋 | 手袋品番ごとに受入または拒否を決める | 袖、手のひら、ホバー、隣接キー | 手袋識別情報、対象キー結果、拒否イベントログ |
| 乾燥面・濡れた指 | 受入、制限、拒否のいずれかを決める | 意図しないドラッグ、二点目、リリース不良 | 液体の付与方法、移動、座標、復帰 |
| 水滴のみ | 無視するかウェット状態へ移行する | ゴーストタッチ、起動、連続コマンド | 水滴位置、保持時間、無人イベントログ |
| 連続した水膜 | 継続、制限、ロックアウトを決める | ランダム座標、状態の往復 | 被覆状態、姿勢、状態遷移、復帰トレース |
| 水膜・指定手袋 | 案件ごとの応答を定義する | 誤受入、誤キー、復帰不能 | 複合条件の試験記録 |
| 流水 | 無視するか操作を制限する | スワイプ、端部タッチ、意図しない起動 | 流路、設置角度、イベントトレース |
| 清掃ワイプ | 清掃モードへ入るか入力を拒否する | ドラッグ、マルチタッチ、装置コマンド | 実際の清掃手順、ロック、解除記録 |
| 乾燥中・残留物あり | 定義した手順で通常状態へ戻る | 早すぎる有効化、解除不能 | 復帰条件、残留物、ベースライン |
産業用操作盤では、誤座標を装置コマンドへ直結させない設計も重要です。タッチコントローラ、ホストアプリケーション、安全系、表示・音によるフィードバックを別の判断層として設計できます。産業用コントロールパネルの用途ページは、手袋、清掃、接地、装置状態を含む実装条件を整理する際の関連資料です。
2. 静電容量式タッチパネルの水・手袋対応を決める8項目
設計レビューでは、動作状態、誘電体スタック、電極形状、信号余裕、GND/シールド/ガード/排水、コントローラ状態、実機検証、変更管理を一続きで確認します。一項目だけを最適化すると、故障の現れ方が別の条件へ移ることがあります。
2.1 手袋、液体、対象キー、判定境界を特定する
手袋は管理された試験品です。メーカー、型式、材質、サイズ、重ね枚数、フィット、指先構造、表面状態、濡れ条件、操作姿勢を記録します。薄いニトリル手袋と、ゆとりのあるコーティング作業手袋では、誘電距離も接触面積も同じではありません。最小キー、端部キー、タップ、長押し、ドラッグ、反復入力、ジェスチャー、マルチタッチの要否も決めます。
液体も同じ精度で管理します。蒸留水、水道水、塩分を含む液体、洗浄剤残留、結露、孤立した水滴、連続水膜、流水、液溜まりでは、電気的な結合経路が異なります。Microchip TechnologyのAVR3002は、水分が信号を正方向にも負方向にも変化させ得ること、ベースライン、液溜まり、ガード検出、復帰を一緒に検討する必要があることを説明しています。
妥当な証拠: 手袋と液体の各状態について、対象キーの応答、禁止イベント、ロックアウト、利用者へのフィードバック、復帰条件が定義されている。
要注意: 「どんな手袋でも使える」「水に濡れても使える」とだけ要求し、試験品や合否条件がない。
| 入力条件 | 調整前に記録する項目 | 受入判定 |
|---|---|---|
| 手袋 | メーカー、型式、材質、サイズ、層数、フィット、指先、乾湿状態 | 指定キーは応答し、禁止キーや禁止ジェスチャーは受け付けない |
| 液体 | 組成、量、分布、温度、保持時間、設置角度、排水 | 付与中、排水後、復帰後の動作をそれぞれ満たす |
| 操作 | キー寸法と位置、タップ/長押し/ドラッグ、速度、反復 | 意図したイベントだけをコントローラとホストが生成する |
| 復帰 | 排水、拭き取り、乾燥、再校正、タイムアウト、再起動の手順 | 承認された状態と時間条件で通常動作へ戻る |
2.2 カバーレンズから筐体までのスタックを固定する
指が電極へ直接触れるわけではありません。電界は指とセンサの間にあるすべての誘電層を通り、背面や端部の導体からも影響を受けます。
素手または手袋
↓
表面コーティング/テクスチャ
カバーレンズまたは意匠面
印刷インク/不透明枠
接着剤または光学接着層
局所的な空隙、気泡、段差
センサ基材と電極パターン
背面接着層/表示器との間隔/光学スタック
表示器、PCB、筐体、シールド、GND
↓
コントローラ測定とホスト判定
Microchip TechnologyのAN2934は、カバーの物性、センサ設計、配線、シールド、接地を関連する設計入力として扱っています。Infineon TechnologiesのAN85951も、オーバーレイと電極の選択を、容量、SNR、寄生容量、シールド/ガード、調整から切り離していません。
仮止めした平板クーポンは初期比較には使えますが、接着、曲面、印刷、ガスケットを含む量産組立品の承認にはなりません。透明部と不透明印刷部でスタックが変わる場合もあります。金属ベゼル、表示器フレーム、締結部品、ガスケット圧縮量は、端部の電界を変化させます。
妥当な証拠: 量産意図のカバー材、表面処理、印刷、接着範囲、センサ位置、表示器、ベゼル、ガスケット圧縮、GND、筐体支持を使って調整している。
要注意: カバー厚さだけを調整依頼に記載し、裸のセンサ結果を完成品の証拠にしている。
2.3 電極寸法とピッチを実際の入力条件に合わせる
電極形状は、承認する指または手袋の接触、画面上の対象寸法、隣接キー、カバースタック、端部、コントローラ方式に合わせます。電極を大きくすれば必ず安全になるわけではありません。有効信号が増えても、寄生結合、液体への応答、隣接チャネル、背面導体の影響が同時に増えることがあります。反対に、間隔を優先して小さくしすぎると、カバーと手袋越しの有効信号が不足します。
Texas InstrumentsのCapTIvate Technology Guideは、電極形状、オーバーレイ、近傍GND、寄生容量、SNRを関連する設計要素として説明しています。同資料は自己容量方式と相互容量方式の設計差も区別しており、ボタン用のガード戦略を座標マトリクスへそのまま移すことはできません。
中央、枠際、四隅、スライダ、ホイール、非操作領域、引き回しを確認します。電極間、電極とガード間、印刷枠をまたぐ水のブリッジも試験対象です。座標型では、大面積物体の拒否、端部追従、手のひらや袖、濡れた指のドラッグ、ジェスチャー、マルチタッチを個別に決めます。
妥当な証拠: 対象寸法、電極パターン、ピッチ、カバースタック、手袋接触、端部形状、測定チャネルまたは座標挙動が同じ設計記録で追跡できる。
要注意: 中央キーが一度反応しただけで形状変更を承認し、隣接キー、端部、水ブリッジ、表示器結合を確認していない。
2.4 「感度を上げる」のではなく信号余裕を管理する
コントローラが分けるべきものは、最も小さい承認タッチと、水、ノイズ、ベースライン変動、組立差、表示器動作、電源状態、意図しない物体による最大の無効変化です。レビューでは、次の考え方を使えます。
使用可能な判定余裕
= 最小の有効タッチ応答
- 最大の無効応答とばらつき
これはコントローラの計算式ではなく、合否境界を考えるためのモデルです。Texas InstrumentsとInfineon Technologiesの設計資料はSNRや寄生容量を扱っていますが、全パネルに共通するしきい値は示していません。
コントローラが許す範囲で、生データ、リファレンスまたはベースライン、タッチ差分、ノイズ、しきい値、ヒステリシス、検出/拒否状態、ガード/ウェット状態、座標、応答、リリース、復帰を保存します。各記録には、ハードウェア、ファームウェア、設定、カバー、センサ、表示器、筐体、手袋、液体、姿勢、電源条件を紐付けます。
しきい値を下げると手袋を検出できても、水、袖、手のひら、表示器ノイズ、量産ばらつきを拾う場合があります。しきい値を上げると水滴を拒否できても、最小の手袋入力を失う場合があります。次の設定変更の前に、スタック、形状、GND、シールド、排水、状態制御を見直します。
妥当な証拠: 量産意図の複数組立品と実機電気条件で、最弱の有効入力と最強の無効入力を比較している。
要注意: ベンチ上の一台で決めた一つのしきい値を、水・手袋対応の解決策としている。
2.5 GND、シールド、ガード、ベゼル、排水へ別々の役割を与える
これらは同じ部品名で置き換えられる機能ではありません。GNDは電気的な基準と帰路を作りますが、電極の近くにある導体は寄生容量を増やし、有効感度を下げることがあります。背面シールドは表示器、バッテリ、ケーブル、モータ、筐体からの結合を抑えるために使います。コントローラによって、接地、駆動、パターン化、未使用の選択が異なります。ガードチャネルは一部の構成で周辺部や液体状態の監視に使えます。排水と筐体形状は、液体が滞留する位置と、どの導体間を橋絡するかを決めます。
Texas InstrumentsのTIDM-1021は、液体耐性をハードウェアとソフトウェアの協調で扱う参照設計です。CapTIvate Technology Guideにはガードチャネルを使う液体検出例があります。ただし、これらはガードリング一つでパネルが防水になることを示すものではありません。
ベゼル高さ、表面勾配、凹部、ガスケット経路、継ぎ目、締結部品、テール出口、コネクタ位置、最下点を確認します。液溜まりに強くても流水で誤動作することがあり、大きな水膜を拒否できても端部の一滴を誤分類することがあります。液体の形を決めるのは筐体であり、コントローラはその結果生じた電気状態を測定します。
妥当な証拠: 図面と試験計画に、GND、背面シールド、駆動シールド、ガードチャネル、ベゼル、ガスケット、排水経路の目的が個別に記載されている。
要注意: 水対策が「ガードリングを追加する」だけ、または未試験の部品単体へIEC 60529のIPコードを付けている。
2.6 コントローラのモード、遷移、復帰を仕様化する
コントローラには、ベースライン更新、ゲイン、タッチ/リリースしきい値、ヒステリシス、デバウンス、フィルタ、走査周波数、ノイズ処理、チャネルグループ、大面積物体拒否、再校正、ウェイク、ガード、手袋/ウェット機能が用意される場合があります。名称と機能はTexas Instruments、Microchip Technology、Infineon Technologiesなどの製品系列ごとに異なります。「グローブモード」という名称だけでは、別のコントローラへ移植できる仕様になりません。
定常状態だけでなく、遷移を試験します。
起動
→ 乾燥・通常
→ 手袋有効
→ ウェット検出
→ 清掃ロックアウト
→ 復帰
→ 故障
この状態名は例であり、必須実装ではありません。各状態について、進入根拠、有効な操作、ホスト許可、表示・音、退出条件、タイムアウト、電源再投入、診断、不確実なときの安全動作を決めます。コントローラが接触を報告してもホストがコマンドを拒否する構成や、コントローラ再校正中にホスト側の操作許可が残る構成もあるため、コマンド経路全体を確認します。
| 試験する遷移 | 管理するトリガ | 残す証拠 |
|---|---|---|
| 通常から手袋有効 | 承認操作、検出状態、ホスト指令 | 設定版数、進入時刻、有効機能、フィードバック |
| 通常/手袋からウェット検出 | 規定した液体パターンと信号状態 | 生チャネル、分類状態、ホストイベント、禁止イベント |
| ウェットから清掃ロック | 清掃指令または規定の液体被覆 | 無効化した操作、利用者表示、故障処理 |
| 清掃ロックから復帰 | 排水/拭き取り、時間、再校正規則 | 復帰時間、ベースライン、全キー再確認 |
| 任意状態から故障 | 断線、張り付き、ノイズ、分類不能 | 診断コード、ホストの安全動作、リセット規則、ログ |
Microchip TechnologyのAVR3002が示すように、ベースライン追従には相反があります。速すぎれば緩やかな有効入力を吸収し、遅すぎれば液体や温度変化後のずれが長く残ります。フィルタを強くしすぎると、検出、リリース、ジェスチャー、復帰を遅らせる場合があります。
妥当な証拠: ハードウェアとファームウェアの版数ごとに、状態表、遷移試験、ホスト許可、フィードバック、復帰証拠、診断ログがある。
要注意: 設定値が文書化されていない、またはウェット/手袋モードの進入・退出を管理された試験や表示なしで行う。
2.7 量産意図の組立品を最終筐体へ入れて検証する
段階試作は原因を切り分けるために行い、初期結果を最終承認と混同しません。
- センサ/コントローラクーポン: 電極案、コントローラ動作、表面材、手袋、液体状態を比較する。表示器、筐体、排水、UI、装置の承認には使わない。
- 量産意図の前面スタック: 実カバー、印刷、接着、センサ、テール、コネクタ、表示器または代表ノイズ源、シールド、GND、管理されたファームウェアを追加する。
- 実装筐体: ベゼル、ガスケット、締結、シャーシ、電源、ケーブル、設置角度、排水、ホストソフトウェア、利用者フィードバックを追加する。
- 量産・変更時の証拠: 承認部品のばらつき、組立限界、水濡れ/乾燥の反復、清掃、摩耗、ファームウェア管理、交換、再検証条件を評価する。
ISO 9241-210:2019は、人間中心設計をインタラクティブシステムのライフサイクル活動として扱います。水濡れや手袋を伴うHMIでは、センサイベントだけでは不十分です。利用者が、接触検出、キー受理、コマンド許可、装置動作、動作完了を区別できるフィードバックを設計します。
妥当な証拠: 量産意図のユニットを実際の機械・電気構成へ組み込み、実利用者または管理した治具で評価し、版数付き記録を残している。
要注意: デモ動画、乾燥した中央キーの試験、手作りクーポン一台を量産適合の証拠にしている。
2.8 量産管理項目と再検証トリガをリリースする
外観上は小さな変更でも、水・手袋性能が変わることがあります。カバー供給元、ハードコート、インク積層、接着剤、接着範囲、局所空隙、表示器、ベゼル仕上げ、ケーブル、コネクタ、GND点、コントローラロット、ファームウェア、洗浄液の変更は判定余裕を動かします。
カバー/印刷図面、電極・配線データ、センサとカバー/表示器の位置合わせ、接着・空隙・硬化工程、PCB/FPCとコネクタ版数、表示器と電源、GND、シールド、ガード、ベゼル、ガスケット、筐体、排水、コントローラ、ファームウェア、手袋台帳、液体手順、治具、受入規則、承認記録、変更責任者をリリース対象にします。
JASPERの試験・品質ページは、図面、サンプル、組立、検査、変更管理を相談するための内部導線です。特定PCAPの水・手袋試験が完了したことや、実機で合格したことの証拠ではありません。
妥当な証拠: 管理計画に、管理特性、承認版数、保存記録、供給元変更、ファームウェア責任、部分/全面再検証のトリガがある。
要注意: カバー、接着、表示器、筐体、ファームウェアを変更しても、タッチ性能レビューを経ずに量産へ入れられる。

3. 水・手袋対応の設計引き渡しを6段階で進める
設計引き渡しは、要求動作から証拠へ向かって進めます。意匠データや「感度を上げてほしい」という依頼から始めると、機構、電気、ファームウェア、品質が別々の合否条件で最適化してしまいます。
ステップ1 - 使用状態仕様を作る
素手、濡れた指、各手袋型式、重ね手袋、拒否対象の袖や手のひら、使用可能なスタイラスを列挙します。設備に関係する乾燥、水滴、水膜、流水、液溜まり、ワイプ、残留物、復帰条件と組み合わせ、対象キーの応答、禁止イベント、コマンドの影響、フィードバック、安全側の動作を決めます。
ステップ2 - 公称レンズ厚さではなく量産スタックを提示する
カバー材、表面処理、テクスチャ、印刷、枠、接着、光学接着、センサ、局所空隙、表示器、ベゼル、ガスケット、締結、シャーシ、GND、シールド、ガード、ケーブル、コネクタ、筐体角度、排水経路の管理図面を揃えます。電界や液体経路へ影響する公差と承認供給元も明記します。
ステップ3 - コントローラとソフトウェアの責任者を決める
コントローラ系列が決まっていれば名称を記載し、ファームウェア担当、ホストソフトウェア担当、生データへアクセスできる担当、設定リリースの責任者を指定します。JASPERが物理的な前面組立品だけを供給するのか、調整へ参加するのか、別担当から承認済み設定を受け取るのかを見積前に明確にします。
ステップ4 - 段階試作で生データを保存する
各段階で合否だけでなく、組立構成と条件を記録します。取得可能なら生データまたは診断トレース、イベントログ、座標、状態遷移、利用者フィードバック、液体状態の写真、手袋識別情報、版数を残します。設定を変える前に、前段階との差から故障要因を絞ります。
ステップ5 - 検証マトリクスを承認する
入力品を、表面状態、対象位置、筐体角度、表示器/電源モード、環境、組立ばらつき、ライフサイクル状態と掛け合わせます。検出、座標精度、誤イベント、リリース、ロックアウト、復帰、フィードバックを分け、特性評価、初品承認、設計検証、量産検査、変更検証のどれに該当するかを決めます。
ステップ6 - リリース一式と変更規則を固定する
管理図面、部品表、代替品、ファームウェア/設定版数、ホスト動作、試験方法、治具、受入限界、保存記録、承認責任者を一つのリリースへまとめます。誘電構成や導体形状が変わる購買代替は、外形と色が同じでも出荷前に設計レビューへ戻します。
4. 水・手袋の検証マトリクスと故障の切り分け方
検証マトリクスは、乾燥した手袋での成功だけを見て、濡れ手袋、端部、表示器ノイズ、復帰の不具合を見落とすことを防ぎます。サンプル数と合否方法は、案件リスク、適用要求、量産ばらつき、OEMの品質計画から決めます。一般記事の数値を量産承認へ転用してはいけません。
| 試験群 | 管理条件 | 記録する結果 | 承認範囲 |
|---|---|---|---|
| 乾燥・素手 | 操作者/治具、中央/端部、姿勢、ジェスチャー | 検出、座標/キー、リリース、誤イベント、表示 | 基準となる操作 |
| 各乾燥手袋 | 型式、サイズ、層数、フィット、温度、姿勢 | 最弱信号、未検出、隣接キー、反復性 | 記載した手袋だけ |
| 濡れた指 | 液体、付与方法、対象、移動、保持 | 受入/拒否、ドラッグ、二点目、リリース、復帰 | 定義した濡れ指動作 |
| 濡れ手袋 | 指定手袋、濡らし方、保持時間 | 複合状態の余裕、誤キー、ロック、復帰 | 乾燥試験と液体試験から推定しない |
| 水滴/水膜/液溜まり | 位置、被覆、角度、保持、枠際 | ゴースト、起動、ウェット状態、ベースライン、復帰 | 水滴誤検出の抑制だけ |
| 流水/ワイプ | 流入方向、速度、実清掃材、洗浄液 | スワイプ、大面積物体、清掃状態、解除 | 規定した手順だけ |
| 表示器/電源/EMI | 輝度、更新、起動、充電器、モータ、電源、ケーブル | ノイズ、未検出、誤検出、遷移 | 実装した電気構成だけ |
| 組立/変更 | 承認スタック差、ロット、供給元、ファームウェア | 余裕分布、追跡性、回帰不具合 | リリース版数の範囲だけ |
不具合が出たときは、直ちに感度を上下せず、先に原因連鎖を確認します。
| 観測した不具合 | 最初に確認する連鎖 | 不十分な「即席対策」 |
|---|---|---|
| 乾燥手袋は通るが濡れ手袋は通らない | 水膜 → 接触面積 → 分類状態 → しきい値/復帰 | 乾燥手袋の設定をそのまま使う |
| 中央は通るが端部で未検出 | 電極端部 → ベゼル/GND → カバー位置 → 座標調整 | 全電極を大きくする |
| 水でタッチが張り付く | ブリッジ/液溜まり → ベースライン/リリース → ガード/ウェット状態 → ホスト許可 | 再起動を通常復帰にする |
| 水を拒否すると手袋を失う | 余裕不足 → スタック/形状/ノイズ/GND → 状態制御 | 一つのしきい値で妥協する |
| ベンチは通るが筐体で失敗 | 表示器/電源/シャーシ/ケーブル → ベゼル/ガスケット → 角度/排水 | クーポン試験を繰り返す |
| ワイプで装置コマンドが出る | 大面積移動物体 → 清掃状態 → ホストインターロック → 表示 | デバウンスだけを速くする |
5. PCAPを選ばないほうがよい条件
指定手袋から得られる信号が必須レンズ越しでは無効入力と分離できない、液体状態と有効タッチが重なる、または一時ロックや分類不確実性を安全上許容できない場合、PCAPは最適な入力方式ではありません。受動スタイラス、硬い非導電工具、明確なクリック感、制御できない連続液体下での常時操作が必須の場合も同様です。
その場合は、抵抗膜式タッチ、シールしたメンブレンスイッチ、機械式操作子、ロータリ入力、ハイブリッドHMIを比較します。静電容量式タッチパネル製品群は関連スタックを確認するための入口ですが、方式選定は作業内容と故障時の影響から決めます。技術方式の不一致をコントローラ設定で隠してはいけません。
6. 設計レビュー前に送る情報チェックリスト
- [ ] 装置の作業、操作者、設置角度、到達範囲、姿勢、コマンド結果
- [ ] 素手、濡れた指、手袋、袖、手のひら、スタイラス、無効物体の定義
- [ ] 手袋ごとのメーカー、型式、材質、サイズ、層数、フィット、状態、濡らし方
- [ ] 水滴、結露、水膜、流水、液溜まり、ワイプ、洗浄剤、残留物、復帰の定義
- [ ] ボタン、スライダ、ホイール、座標、ジェスチャー、マルチタッチ、端部、非操作領域の動作
- [ ] カバーレンズ材、表面処理、仕上げ、曲率、厚さ、印刷、枠、承認供給元
- [ ] 接着/光学接着、被覆範囲、局所空隙、気泡・ボイド限界、硬化工程
- [ ] 電極パターン、ピッチ、配線、枠、テール、コネクタ、位置合わせ図面
- [ ] 表示器、PCB、電源、ケーブル、シャーシ、GND、シールド、ガード、ベゼル、ガスケット、筐体、排水
- [ ] コントローラ、ファームウェア担当、ホスト担当、生データ取得、設定版数、更新方法
- [ ] 検出、座標精度、誤イベント、リリース、ロック、表示、復帰、故障の受入規則
- [ ] 試作段階、承認済みサンプリング計画、量産ばらつき、追跡性、変更トリガ、承認責任者
このチェックリストにより、静電容量式タッチパネルの水・手袋対応を、見積可能でレビュー可能な技術パッケージへ変換できます。不明項目を供給者の推測で埋めず、未決定の設計入力として管理してください。
8. カバーレンズ仕様と使用環境を送る
設計レビューには、カバーレンズ図面と積層、対象キー/電極案、手袋台帳、液体状態表、表示器と電源、筐体角度、GND/シールド/ガード、排水、コントローラ境界、受入マトリクスを提示します。JASPERはPCAP前面スタックの製造候補として比較できますが、見積書では、センシング設計、調整、ファームウェア、治具、実機検証の担当を明記してください。
技術資料
- Texas Instruments, CapTIvate Technology Guide: Design Guide.
- Texas Instruments, TIDM-1021 Liquid-Tolerant Capacitive Touch Keypad Reference Design.
- Microchip Technology, AN2934 Capacitive Touch Sensor Design Guide.
- Microchip Technology, AVR3002: Moisture Tolerant QTouch Design.
- Infineon Technologies, AN85951: PSoC 4 and PSoC 6 MCU CAPSENSE Design Guide.
- International Electrotechnical Commission, IEC 60529 - Degrees of protection provided by enclosures.
- International Organization for Standardization, ISO 9241-210:2019 - Ergonomics of human-system interaction.
関連する設計記事はJASPER技術ブログで確認できます。
よくある質問
厚手の手袋でも静電容量式タッチパネルを操作できますか?
可能性はありますが、手袋の厚さだけでは判断できません。手袋のメーカー、型式、材質、サイズ、層数、フィット、指先構造、乾湿状態、カバースタック、電極、コントローラ、GND、対象キーを一組の条件として固定し、実装状態で検証します。
感度を上げれば手袋操作の問題は解決しますか?
感度調整だけでは解決しません。しきい値を下げたりゲインを上げたりすると、弱い手袋入力と同時に、水滴、袖、手のひら、表示器ノイズ、端部結合、組立ばらつきも拾うことがあります。最弱の有効入力と最強の無効入力を生データで比較します。
静電容量式タッチパネルの水滴誤検出対策とは何ですか?
有効な操作がないときに液体を無効入力として扱うシステム動作です。水滴を無視する、ウェット状態へ移る、操作を制限する、入力をロックするなどの方法があります。進入条件、表示、ホスト許可、解除、復帰まで定義し、IPコードとは分けて評価します。
濡れた指でもPCAPは操作できますか?
濡れた指を有効な入力状態として定義し、検証すれば対応できる場合があります。液体、付与方法、対象キー、動き、表面状態、筐体角度、許容座標、誤イベント、リリース、復帰を決めます。無人の水滴を拒否できても、濡れた指を追従できるとは限りません。
ガードリングを付ければタッチパネルは防水になりますか?
なりません。ガードチャネルは一部のコントローラ構成で周辺部や液体状態の監視に使えます。筐体の保護性能は、カバー、シール、継ぎ目、締結、テール、コネクタ、組立、IEC 60529の試験構成で決まります。濡れた状態の操作性は別に検証します。
手袋操作では電極寸法とピッチをどう変えますか?
実際の手袋接触、対象寸法、カバースタック、隣接キー、端部、配線、コントローラ方式、水のブリッジに対して評価します。電極を大きくすると有効結合と不要結合の両方が増える場合があります。共通の寸法やピッチはなく、量産意図の組立品で候補を比較します。
ベンチ試験で合格したPCAPが筐体に入れると誤動作するのはなぜですか?
表示器、電源、ケーブル、シャーシ、GND、シールド、ベゼル、ガスケット、締結、設置角度、排水が、容量、ノイズ、液体経路を変えるためです。仮止めクーポンにはこれらがありません。量産意図のスタックと筐体、電源状態、ホストを含めて再検証します。
IPコードがあれば雨天でもタッチ操作できる証明になりますか?
証明にはなりません。IEC 60529は、所定条件での筐体保護を分類します。タッチ座標、誤イベント、ロックアウト、濡れた指の追従、復帰は規定していません。筐体保護と水濡れ時の操作性には、別々の要求、試験構成、承認記録が必要です。
水・手袋調整ではどのデータを保存しますか?
取得可能な生データ、ベースライン、タッチ差分、ノイズ、しきい値、ヒステリシス、検出/拒否状態、ガード/ウェット状態、座標、応答、リリース、復帰を保存します。ハードウェア、ファームウェア、カバー、センサ、表示器、筐体、手袋、液体、角度、環境、電源条件も紐付けます。
OEMは水・手袋対応のレビュー前に何を送ればよいですか?
量産カバーレンズの図面と積層、電極と対象キーの案、手袋台帳、液体状態表、表示器、筐体、GND/シールド/ガード、コントローラとファームウェアの責任範囲、ホスト動作、検証規則を送ります。意匠、接着、電極配線、治工具を固定する前に不足条件を洗い出せます。
図面と要求仕様の技術レビュー
図面、使用環境、年間数量をお送りください。製造前に構造と検証条件を確認します。